佐々木 健
(東京大学大学院 新領域創成科学研究科 人間環境学専攻 教授)
日本時計学会は1948年に発足し,日本の時計産業の発展とともに学会の歴史を刻んでまいりました.本学会の特徴は時計産業が中心となっていることです.学会の多くが学問分野を基礎に成り立っているのに対し,日本時計学会は時計という精密機器が中心にあり,時計の要素技術,製品設計,製造技術,エネルギー源,材料,システムに至る広範な技術を扱っています.本学会の学会誌は時計に関連する技術の学術論文や解説が掲載されており,日本の時計技術の変遷を記録した貴重な技術アーカイブとなっています.
時計の技術は常に発展しています.時計の基本機能である計時機能については水晶時計によって実用上十分な精度が達成されていますが,電波時計の出現により時刻の補正が自動化され,電波時計は新たな市場を築いています.エネルギー源も多様化し,ソーラーパネルや機械的な発電機構も利用されています.また,さまざまなセンシングや通信機能を付加した製品も現れ,これらは身につける情報機器として新たな製品分野を拓きつつあります.一方,純粋な機械式時計は精度とデザインの洗練度を上げ,精密機械の極致として独自の世界を展開しています.本学会がこうした新しい時計技術の情報交換の場となり,技術の進歩と時計産業の発展に貢献することを会員とともに目指していきたいと思います.